誰かの願いが叶うころ《聖戦後》 -2- (R18)



「・・・・・・・・・っ」

”俺だって人並に女の子とは経験あるんだぞ”

・・・・・・・・・・・・・・何が人並みだ。

「ぅ、あ・・・・・・・・・っ」

まるで野獣ではないか、と働かない頭の片隅で、シュラは考えた。

確かに「これは贖罪だから、遠慮は一切無用」と言ったのは自分だが。

「アイオ、ロス・・・・ちょ・・・・っ、」
「ごめん、止まんない。」

ちょっとくらい休ませてくれ、と言おうとしたのだが。
瞬間に切り返されて、快楽がより奥まで届く。

・・・・・・・・・・・・・快楽。

こんな屈辱に耐えられるものかと思っていた。
そして、この相手に対する気持ちを持て余していた。

だが、人間というものは一度ハードルを越えてしまうと、その後転がり落ちるのは早い。
今まで自分の相手をしてきた女達もそうだったのだろうか。
ふと、考える。

・・・・・・・・・・・・皮肉なものだ。

ハードルを越えさせた張本人は、この相手を怖がって逃げ回っている。


・・・おそらく、本人もハードルを越えたいと思っているだろうに。


その考えが頭を掠めた次の瞬間。

今まで相手に貪り食われるままになっていたシュラの内で、獣が目を覚ました。

「アイオロス・・・・・!」

後頭部を掴み、自分から唇を貪る。
より深く取り込もうと相手の身体を引き寄せ、身体を揺する。
煽られたアイオロスは、ますます歯止めが効かなくなり。

シュラの方も、更にそれに煽られて。

相手を全て食い尽くそうとするかのように、ただ行為に没頭して、快楽に身を浸した。


*


「お前さぁ・・・”したことある”程度のケーケンじゃないだろ?実は。」

何度目かの繋がりを解いた後。
さすがに疲れたのか、アイオロスはふーっ、と大きく息を吐き出しながらおどけて言った。

「貴方の方こそ”人並”はかなりサバを読んでるでしょう。」

アイオロスはきょとん、とした顔をして。

「いんや。人並だよー?・・・こんな状態になったの初めてだもんなー。」

オーバーアクションで両手を上に上げた。
それから。

「合う・・・のかなぁ?」

ぽそりと不用意に呟いて、シュラの顔を見た。

「・・・そうかも知れない。ただこの調子では・・・・・」

シュラは一旦言葉を切って。

「・・・・・今後やめられなくなりそうな気がしませんか?」

ふざけているとも本気ともつかない表情で続けた。

アイオロスは。
殴られたような表情の後、少し困った顔に変わり。
そして。

「かも知れないなー。」

もう一度両手を上げて、降参のポーズで返してくる。

「第一、まだ気が済んでないでしょう。」
「あ、ばれてたの。」

アイオロスはもそもそと動いて、シュラの肩に手をかけたが。

「これじゃ贖罪にはなりませんね。」

これを言われて、少したじろいだ。


それはもちろん、その方がシュラに対する申し訳なさは遥かに少なくてすむ。
だが、別の人物に対しては―――・・・・・・・・・・・


アイオロスの表情が曇り、その原因を正しく推測したシュラは、わざと足を動かして相手の熱に触れる。
一瞬だけ困った顔をしたアイオロスだったが、すぐに獣と化す。


飛びかかるような勢いで組み敷かれながら、シュラは考えた。


無論最初からこれは贖罪などではない。

では何だ?
自分を貶めたサガに対する復讐か?

いや、おそらくそうでもないだろう。


本当の理由は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・この男に対する切り札として、置いておくことにしよう。


そう結論付けて、シュラは飛びかってきた獣に腕を回して喰らいついた。





2007/12/20

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