太陽の王と月の妖獣 -3- (R18)



ここのところ、しばらくサガからの呼び出しがない。

それは気分的に滅入っていたカミュの方が、ミロやアフロディーテのところはもちろん、シュラやデスマスクが宴会をしている現場にまで入り浸って、あからさまに避けていたのだが。
いつまでもそんなことを続けているわけにもいかず、夜は自分の宮で休むようになってからも何の音沙汰もない。
もちろん、それはありがたいことだ。

・・・・・・・いや、ありがたいことのはずだったのだが。



その日もどうしても寝付けなかったカミュは、ベッドの上に身を起こした。
窓から差し込む冷たい月明かりに身を晒しても、どうにもならない。

体が妙に火照っていて。
それから。

耳元で、声の残像が聞こえる。


・・・・・・・・・・・カミュ、私を・・・・・・・・・・・


ぞくっ...、と背筋に何かわからない感覚が走って。
意識を逃がそうとしたカミュは、頭を大きく振って寝台に手をついた。

が、落ち着くどころか、呼吸はなおも荒くなる。
寝台についていた片手が無意識に自分の膝をなぞり、夜着の裾を捲り上げて。

熱に、触れた。


自分の手のはずなのに、びくっと大袈裟に震えたカミュは、思わず唇を噛み締める。

「・・・ど・・・うして・・・・・っ、」

誰に、何に対して言っているのかもわからない抗議の声が、誰も居ない室内に響いて。
自分自身に屈したカミュが、観念してもう一度自分に触れた、時。


「カミュ」


自分のものではない、声。
驚いて、あたりを見回したその瞳に映ったのは、予想通りの人物の姿だった。

「・・・・・カミュ。」

羞恥の為にまともに顔も上げられないカミュに、サガはもう一度声をかける。
静かに近づいたサガが触れると、肩が大きく跳ね上がった。

「・・・気にすることはないんだよ。」

サガは柔らかくカミュの肩を包んだ。

「皆同じなんだからね・・・」

昔のようにふんわりと包み込まれ、頭を撫でられて放心状態になっているカミュの顎に手がかかって。

「・・・だから、今日は、カミュのために・・・」

吐息と共に唇を塞がれたが。

それは、何故か、優しかった。


*


いつものように、カミュの欲望と本能を引きずり出すような行動はなく。
かわりに優しい手と、唇が、微かに燃え残った昔の感情を呼び覚ます。


「・・・・・・・・・ぁ、」

手が双丘を撫でおろしても、嫌悪感はなく。
それどころか、手が足の方に遠ざかれば切なくなって。

「・・・・・サガ・・・・、」
「・・・何だい?」

霞んだ視界に映った表情は、昔のように優しく。
しかも・・・・・・・・・

緩やかな愛撫に焦れたカミュは、耐え切れずサガにしがみついてしまう。
その度にあやされ、また刺激が遠ざかり、しがみついて情けを請う。

どれくらいそれを繰り返したろう。


サガの手を、唇を何度か汚してしまった後。

気がついた時には、サガの腰に縋って頭を撫でられていた。
唇には相手の熱を含んで、舌を絡めて。
欲しい一心で。

どうしようもない、この熱に押し入られて揺すられたい欲望。
内壁を擦られて狂いたい衝動。


今日のサガは、余計なことは何も言わず。
ただ、抱きしめて押し入ってきた。


「・・・・・ぁ・・・、んっっ」

声が上って、自然腕が首に巻きつくと。
双丘に手がかかって、より奥まで熱が侵入してくる。
それでも足りないとでも言うかのように足が腰に絡むと、腰が揺れて脳に痺れが伝わる。

「・・・・・・・サ、ガ・・・・・、ぁ」

確認するように名前を呼ぶと、動きが激しくなって信じられないくらい快楽が増幅して。
カミュは衝動を止められず、何度もサガを呼んで悦楽に振り回された。


*


頬を撫でる手にカミュが目を覚ますと。
月の光に縁取られた、サガの綺麗な顔があった。

眩暈のするような既視感。

昔、自分が悩みを打ち明けると、サガはいつもこうして頭を撫でてくれたのだ。

カミュが、まるでアイオロスがいなくなってからのことが夢だったかのような、現実逃避に浸っていると。

「ぁ・・・っ」

突然サガが動いて、緩やかな刺激が伝わった。

「・・・・・いつも私が呼んでばかりだったけど、カミュがこうしたい時はいつでも私のところに来ていいんだよ。」

熱の余韻が残る体は、まだ熱く。
膝に手が伸びれば、簡単に火がつく。

どう返していいのかわからないまま、次には抱きすくめられ。
火に薪をくべるように、唇が項を滑る。


自分は昔、この人に憧れていた。
それはこんな意味だったのか?


・・・・・・この間までは、断じてそんなことはないと言えたのだが。
もう今では自分でもわからなくなりながら、カミュは初めて自分から快楽に身を委ねた。




2008/8/19

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