太陽の王と月の妖獣 -1- (R18)



アイオロスが死に、サガが姿を消してから4年めの同じ日の深夜。
カミュは双児宮の前に立っていた。


ふう、とひとつため息をつく。


そろそろ帰ろうと踵を返した時、宮の方で人の気配がした。
反射的にそちらを伺うと、そこに立っていたのは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・・・・・・・・サガ?」


漏れた言葉にこちらを向いたその人は、一瞬凍りついて驚愕の表情を浮かべたが。
すぐに昔のように微笑を浮かべて。
「・・・久しぶりだね、カミュ。」
昔のように穏やかな声で話しかけてきた。
「・・・無事だったんですか?」
問いかけながら近づくカミュ。
「ああ。・・・・話は中でにしないかい?」
小声で誘いかけられて、うなずいて双児宮に入った。


「・・・今までどうしていたんですか?」
ソファに座って、サガが目の前に座るのを待ってから、カミュは疑問を口にした。
心配していたのだ、この4年間、とても。
聖域の様子も何かおかしいし、教皇はまるで人が変わったようだ。
アイオリアはもちろん兄の件で落ち込んでいてとっつきにくくなっているし、ムウはジャミールに篭ってしまい、滅多に姿さえ見せない。
サガが何も答えないので。
「心配していたんです。・・・・皆。」
少し責めるように響いたのは、しかたのないことだろう。
自分達は、この人を頼りにしていたのだ。
この人と、アイオロスを。
ミロはアイオロスにとても懐いていたが、自分はこの人が好きだった。
とても憧れていた。
この人のようになりたいと。
行方不明になった時、どんなに胸の張り裂けるような気持ちになったことか。
「・・・・・・・・カミュ。」
サガは立ち上がって、近づいてきた。
「・・・私に会ったことは、皆には内緒にしておいてくれないかい?」
「・・・・・どうしてですか?」
思わず見上げる。
「ちょっと色々あってね。」
「でも・・・、皆心配しています!」
すでに黄金聖闘士とはいえ、まだ11歳の子供だ。
真摯な表情で見上げてくる。
その顔を見て、サガは今の頼み事は聞いてもらえないな、と直感した。


「カミュ。」
額に唇が降りてくる。
これは昔から何度もくれた優しいキスで。
カミュはどうして内緒にしてくれなどというのだろう、とぼんやり考えていたのだが。
次に唇を塞がれて驚いた。
口の中に何か生暖かいものが入ってきて、歯に、舌に触れる。
びっくりしているうちに、襟元に指がかかって、衣服のボタンをはずしていく。
「・・・・・・・・・・・・・・サガ・・・・?」
わけがわからず、唇が離れた隙に呼びかけたが。
サガは悲しそうな顔をして、少し首をかしげた。
その顔に見とれているうちに、ソファに押し付けられて。
上からサガが圧し掛かってくる。
抱きすくめられて、首に顔を埋められて。
事ここに至って、カミュは何が起ころうとしているのか何となく理解して怯えた。
「・・・・・・・・サガ!」
上にある体をよけようと胸に手をついてつっぱるが、大人と子供、そんなものは何の役にも立たない。
そうしているうちにも、手は腰のあたりを彷徨って、衣服を引き下ろす。
「嫌です、サガ・・・・・!」
いくら拒否の言葉を投げつけても、何の反応も無く。
全ての布を床に落とされて、足を開かされた。
「い、や・・・・・・・・・・っっ」
サガの頭が沈んで、覚えの無い感覚が始まる。
膝の内側を、双丘を、手が優しく撫でながら、舌が熱に触れた。
「や・・・・・・・っ、」
体が跳ね上がって、手が縋るように頭にかかる。
舐め上げられて、含まれて、あたりにいやらしい水音が響いた。
「サガ!・・・・やめ、て、ください・・・・、」
叫ぼうとしたが、どんどん進んでいく行為に、どうしても語尾が弱くなる。
「い、やぁ・・・・・・っっ、」
覚えのない感覚が、背筋を駆け上って脳に届く。
何か吸い上げるような音かして、体が震えた。
「ぅ、ん・・・っ、」
今まで知らなかった快感と、それが押し寄せてくる恐怖と、羞恥と。
色んな感情がないまぜになって、カミュは頭を振った。
髪がぱさぱさと乾いた音を立てたが、それとは逆に、目にたまった涙がこぼれて頬を濡らす。
どんなに泣いても、湧き上がってくる圧倒的な欲求には勝てない。
「いやぁ・・・・っ、ぁっ、」
なんとかするすべも止めるすべも持たないカミュは、ただ誘われるままに達した。



ソファに体を預けたまま、ただぽろぽろと涙をこぼすカミュの頬に、優しい指が触れる。
「カミュ。」
「・・・・・・・・・・・っ、ふ、」
「泣かなくてもいいんだよ。」
手が頬を包んで、唇が額に、こめかみに、頬に触れた。
「ほら、おいで。・・・もっと優しくしてあげるから。」
手を引かれて、抱え起こされる。
背中を優しく撫でられて、カミュはサガの胸に身を預けた。
胸を涙が濡らす。
「大丈夫だよ。何も心配することはない。」
言いながら、背中を撫でていた手が背筋を滑り降りて双丘に届いた。
あやすように撫でてやりながら、場所を探って入り口に触れる。
「・・・・・・・・、」
びく、とカミュの体が震えた。
「・・・・・大丈夫。」
耳元で囁きながら、指を少しづつ奥に進める。
「ぁ、」
涙で濡れた瞳を見開いて、カミュは首を振り続けたが。
じりじりと指は中に侵入してきて、ゆうるりと動き始めた。
「い、・・・・・・やぁ、・・・・ぁ、ぁん・・・・・っ、」
言いようの無い感覚が押し寄せてきて。
触れられるまで気づかなかったが、熱はまた熱くなっていた。
「んっ、ぁ・・・・・・・・・、」
熱を指で弄られながら、中の指が増やされて、蠢く。
「ふ、ぁ・・・・・っ、あ・・・っ、」
自分で自分をどうすることもできず、ただ相手に縋りついた。
ずいぶん長いことそうしていたような気がするが、ひょっとしたら一瞬だったかもしれない。
ソファに横たえられて、髪を撫でられて。
足を抱え上げられて、衝撃が来た。
「あ・・・・・・・・・・・・、」
放心して、声さえ忘れていた。
ずずずと異物が侵入してきて、さっきまでとは比べ物にならない圧迫感。
「ひ、ぁ・・・・・・っ、」
狭い内壁を押し広げながら、熱が侵入してくる、リアルな感覚。
侵入の衝撃が過ぎた後、しばらくまた髪を撫でられていたのだが。
「ぁ、ぃ、痛、・・・・・・・・、ぁ」
突然動き始められて、声が上る。
苦痛と、その後に湧き上がってくるどうしようもない感覚に翻弄されながら、ぽろぽろと涙を流す頬に、また指が触れて。
「い・・・・・・やっ、ぁ、」
思わず振り払うが、振り払った手はそのまま腰に巻きついてきた。
伸び上がって逃げられないようにしておいてから、再び動き始められて。
「い、やっ、・・・・・サ、ガ・・・・・・・・・・っ、」
どんなに押しのけようとしても、どんなにもがいても適わない。
「い、や・・・・・・・・・・・・・・っ、ぁ、ぁあ・・・・・っ、」
そのうちに苦痛ではない何かが押し寄せて、声が変わって。
それが合図だったかのように、指が熱に絡みついて追い上げてくる。
もう頭の中はめちゃくちゃだった。
「いや・・・・・ぁん、あ・・・・・っ、ぁ」
羞恥と、恐怖と、わけのわからなさで滅茶苦茶な気分なのに、体は脳に快楽を伝えてくる。
どうしていいのかもわからず、相手にしがみついた。
だが、しがみついた相手はカミュの細い腰を抱きしめて腰を揺らし続けるだけで。
「ふ、ぁん、ぁ・・・・・・・・・ぁあ・・・・、」
今度は唇ではなく、指と手に追い上げられて、2度目の絶頂を迎えて、体を震わせた直後。
自分の内側を蹂躙している異物も震えて、中に何かを撒き散らすのがわかって。
とてつもない快感と共に、自分にも説明できない穢れたという重い絶望感を感じて、カミュは新しい涙を流した。


目を覚ました時、カミュはちゃんと服を着て、ソファに横たわっていた。
懐かしい、優しい顔が見下ろしてくる。
だが、この人は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「カミュ。」
カミュは体を起こした。
サガは隣に座って、やんわりと抱きしめてくる。
「カミュ。・・・私はあれからずっと聖域にいたのだよ。」
わけがわからず黙り込んでいると。
「・・・・・・ずっと教皇宮にいたのだ。」
言葉は続いて、カミュははっとして顔を上げた。
「・・・皆に秘密にしておいてくれるかい?」
驚愕の表情で固まっているカミュの額に、唇が触れて。
「今からもずっといるのだ。・・・皆には言わず、時々会いに来て、私を慰めてくれないかい?」
言われた言葉の意味にたどり着いたカミュは、思わずサガを押しのけようとするが。
「・・・・・・・・・そしたら私も今日のことは誰にも内緒にしておくよ。」
次の言葉で、カミュは恐怖に凍りついた。


ダレニモナイショニシテオクヨ


恐怖と驚愕に瞳を見開いたまま、ただ涙をこぼすカミュの髪を優しく撫でながら、そのかつて憧れたはずの優しい人は、優しい笑顔で笑いかけてきて、
「ね?」
と問いかけてきた。


もう頷くしかないカミュを抱きこんだ人物は耳元で
「ありがとう。・・・いつもいい子だね、カミュは。」
と昔のように優しい声で囁いて、首筋に顔を埋めてきた。
カミュはその声を聞きながら、絶望と、諦めと、ほんの少量の期待と共に、その人の首に手を回した。






2006/9/15

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